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読書ってなんですか

集団は役に立つけど手抜きはするなよ

 4月になり環境が変化した人も多いだろう。環境が変化するということは自分が所属する集団にも変化が生まれるということ。しかし新しい集団になじめるか不安な人が多いだろう。今回はそんな集団についての話。

 集団というと小難しい表現に聞こえるが、ようは社会であり他者である。

 集団はどういった場面で役に立つのか。本書には4つ紹介されている。

 まず一つ目。それは「愛情や親密さを求める欲求を満たしてくれる」こと。配偶者の有無によって平均余命が異なるデータがあり、家族や友人との関係性は生きていく上では不可欠なものだ。

 二つ目は「一人ではできないことでも集団になれば可能になる」こと。例として奈良の大仏大阪城の石垣などがあげられているが、現代で言えば超高層ビルなども集団だからこそできる技術だ。それこそ奈良の大仏はのべ290万人の人が動員されたというデータがある。

 三つ目は「自分や世界を理解するための枠組みを与えてくれる」こと。自分という存在は他者がいてこそ比較でき理解することができる。それは他者が多ければ多いほど自分との類似性、相違性を認識することができるのである。

 そして最後、四つ目は「アイデンティティ確立に貢献する」ことにある。人は個人としてのアイデンティティと社会としてのアイデンティティの両方を持ち合わせている。この説明として本書にあげられているのは戦争と自殺の関係。第二次世界大戦前後の日米の自殺者数のデータを見ると、戦時中は明らかに自殺率が低下しているということ。これは戦争が国民の大多数を国家である社会と同一視させ、国民(社会)としてのアイデンティティを顕在化させたものと考えられている。その結果、アイデンティティが強固になり自殺率が低下されるのである。最後に書かれている「その意味で戦争は一時的に人々を幸福にする」という一文には同意したくはないが、データとして現れていることを見ると人々は社会的アイデンティティを強くすると、自分ではなく社会のために生き始めるということがわかる。これはブラック企業の忠誠心にも通ずる気もする。個人のアイデンティティよりも社会、企業のアイデンティティが強固になり働き続けるのだ。

 つまり集団があるからこそ自分という存在が確立し、自分が見えてくるわけだが、集団にはデメリットもある。いちばん有名なのは社会的手抜きだろう。

 社会的手抜きとは10人である作業を行う場合、一所懸命にしているのは6人、適当にしているのが2人、なにもしていないのが2人いるといった「全体の中にサボるやつは必ず出てくる」ことをいう。社会的手抜きの実験は数多くされており、社会的手抜きをどうすれば防止できるのか、といった対策も数多く提唱されている。

 1.個人の貢献がわかるようにする

 2.課題に対する自我関心を高める

 3.他者に対する信頼感をもつ

 4.集団全体のパフォーマンスの変動についての情報が成員個々人に与えられる

 詳しい説明は本書をお読みいただくとして、集団にはメリット・デメリットがあることを教えてくれるのが今回読んだ「グループ・ダイナミックス --集団と群集の心理学」。グループダイナミックスとは10人以下の小集団を対象にした研究が多いが、本書では大きな集団の研究なども紹介されている。

 また最後の章には「テロリズム」を題材にしてテロと集団の心理が説明されていて、とても面白かった。がうまくまとめて説明できる気がしなかったのでここでは割愛した。

グループ・ダイナミックス --集団と群集の心理学

グループ・ダイナミックス --集団と群集の心理学

 

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