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なろうやエブリスタの書籍化「ウェブ小説の衝撃」レビュー

 

 ウェブ小説。それは「小説家になろう」や「エブリスタ」といった小説投稿サイトに投稿された小説のことで、昨今はこのウェブ小説を書籍化する動きが活発化しています。そして書籍の売り上げランキングにはウェブ小説がだいたい入っています。

 今回はこのウェブ小説について書かれた本「ウェブ小説の衝撃: ネット発ヒットコンテンツのしくみ」についてのレビューです。

ウェブ小説の衝撃: ネット発ヒットコンテンツのしくみ (単行本)

ウェブ小説の勢い

 ウェブ小説には勢いがあるのはなぜか。

 その一つにユーザー数があります。

 前までは小説雑誌に掲載されていた作品が書籍化したり、書籍で初出しといった流れが主流でした。しかし今や小説雑誌に勢いはなく、現在では数千部から一万部代がいいところ。書籍を出したからと言って広告費も少なく宣伝ができない。

 対してウェブ小説は雑誌を買う必要性はなく無料で楽しめます。そして2014年の小説家になろうのユニークユーザーは400万人。そして人気作品を書籍化するのですから広告費も少なくてすむ。

 無料で楽しめる作品を書籍化したところで売れるのか、という疑問があるかもしれませんが、無料で楽しめるドラマやアニメのブルーレイが売れるのと同様に、ウェブ小説の書籍化の売り上げは好調です。

 ユーザー数のほかに、出版社の弱体化がありました。書籍が売れないために出版社はコストがかけられません。「なろう」や「エブリスタ」に掲載された作品の書籍化は、印税は発生しても原稿料は払わなくてもいいわけです。よそが運営するコンテンツを持ってくれば、それだけローコストになる。さきほどもあげたように広告費なども節約できます。

 さらに、ウェブで人気の作品はアクセス数などがわかりますから、部数の調整や企画として取り上げやすいという利点があるそうです。

ウェブ小説の良いところ

 一般的な小説には字数制限が存在します。対してウェブ小説には制限がありません。「ログホライズン」や「まおゆう」を書いた橙乃ほまれ氏は「長い話を書きたかった、文庫一冊でまとまるような話は書けなかった」と言っており、実際にログホライズンの書籍の分厚さは尋常ではありません。国語辞典に匹敵するほどの厚さでこれを読むのは根気がいるなと思いなかなか手に取れず、読んでいません。それでも売り上げランキングに載ってくるのだから、あの厚さをみんな読んでいるのかと思うと、読み続けられるほどの魅力がある作品なんだなと改めて感じます。

 ウェブ小説はいわばなんでもあり。起承転結の承がずっと続いても面白ければ問題なはないし、引きに次ぐ引きで読まれる連載形式でも問題ないわけである。

 エブリスタの場合文字数が少なくても、更新頻度を高めたほうがアクセス数は増加するいうデータもあり、短い文章で引きを作っていくスタイルは週刊漫画雑誌に似ています。

 

なろうで増えた異世界ものや俺TUEEEEE

 小説家になろうでは、異世界転生や俺TUEEEといったジャンルが好調です。なぜこういった作品が「なろう」で増えたのか。それは単純に有名になった作品のジャンルがこれだったから、とも書かれています。有名になった作品を読んで自分も書きたいと思う人が同じジャンルで作品を書く。こうして異世界転生や俺TUEEEが増えていったのではないか、というわけです。

 ただそれだけでは味気ないので、他に異世界ファンタジーが描きやすいという側面も紹介されています。どういうことか。

 異世界ファンタジーは「世界を救う」という大きな目的があるため、連載形式には向いているとのこと。また調べ物や前提知識が少ないというのもある。SFやミステリでは調べ物が必要だが、ゲームっぽい異世界ではご都合主義が許される。こういった点からも異世界系は書きやすいとのこと。こうして、書くまでの敷居も低いこともあり、異世界転生をはじめとした異世界ファンタジー作品は「なろう」には溢れている。

 対して「エブリスタ」にはデスゲームやパワーゲームといったジャンルの作品が注目されているともある。

おわりに

 本書は「小説家になろう」と「エブリスタ」を中心に、ネット発コンテンツがどうヒットしたのか、その裏側をわかりやすく説明している。なろうやエブリスタを知っている人はもちろん、知らない人にもウェブ小説がここまできているんだと知ってほしい限りです。

 おしまい。

本日の一冊

ウェブ小説の衝撃: ネット発ヒットコンテンツのしくみ (単行本)