読書が下手な人のブログ

旧「本を熱いうちに読む」

小説に難語は必要なの?

 

 言葉尻。それは「話の本筋からはなれた、たいせつでない部分のこと」である。これに、とらえるという言葉が足されると言葉尻を捕らえるとなり、揚げ足を取ると似たような意味になる。しかし、今日紹介する言葉尻が入った本は最初に書いた意味に近い。

 上記の本は国語辞典編集者が書いた本で、小説の言葉尻、つまりは物語の本筋でない、ささいな言葉の表現について著者が感じとったことがまとめられている。11冊の小説が今回は取り上げられている。例えば「桐島、部活やめるってよ」や、「オレたちバブル入行組」、「マチネの終わりに」など有名な作品ばかりだ。その中の一つに見つけてしまったのである。俺の妹がこんなに可愛いわけがないのタイトルを。

 俺妹のラノベ原作は読んではいないけれど、アニメはとても大好きで何回か見直した。その俺妹のラノベ原作を国語辞典編集者がどう読んだのか、気になったので読むことにした。

「粛々と味噌汁を啜っている親父」という一文について、「粛々と味噌汁を啜る」という表現はどうなんだろうということから本章は始まる。普通ならば「黙々」ではないのかと。しかし、三省堂国語辞典には粛々の意味の一つに「何が起こっても、予定どおり着実におこなうようす」と書かれていて、今回の場合は、テレビが流れているけれど気にもとめず味噌汁飲んでるよってことらしい。

 そうして著者は本題に入る。俺妹を読み進める著者が感じたこと。それは、俺妹の読者はどのくらいの語彙力がアップするのか、ということだった。

 私は以前、漫画の中に難しい語がどのくらい含まれるか、簡単な調査をしたことがあります。末次由紀ちはやふる』および諌山創『進撃の巨人』のそれぞれ第一巻を調べたところ、外国人学習者が受験する「日本語能力試験」の最上級にも出てこない難しい語、特殊な語の数は、両作品ともに二十数語ありました。

 比較のため、小説一冊に、同様の難しい語がどのくらい含まれるかについても調べました。三浦しをん舟を編む』には、アイデンティティ、唖然、過酷、苦言、豪放磊落、西行忌、自愛専一、潤沢、嘱託、呻吟・・・」など約二百三十語の難語が含まれていました。

 このことから、小説一冊にある難語は漫画十冊と同程度であると書かれている。調査数が少なすぎてひどいけれど、こういった調査は面白い。そして今回の俺妹の場合はどうだったのか。

 「日本語能力試験」の最上級より難しい語は約八十語あったそうです。上の調査に当てはめると、ラノベ三巻読めば小説一冊分の難語数になるみたいですね。

  他にも俺妹にある「ぐちゃめちゃ」や「テキトー言う」といった表現に著者なりの感想が述べられていますが、やはり気になる難語の数。そもそも難語は必要なのでしょうか。難しい言葉遣いをして、読者がその意味を理解できない場合、誤読されてしまう可能性があります。それなのに難語を使用するのは作家としてのプライドがなにかがあるのでしょうか。一つには読みやすさもあるでしょう。国語辞典で意味を調べると「~しているさま」といった表記がされている言葉は、その状態を説明するよりもその単語で意味を理解したほうが読みやすい。例えば、稠密(ちゅうみつ)という言葉ですが意味は「ぎっしり詰まっているさま」で、「人口の稠密な都市部」といった使い方があるらしい。「人口がぎっしり詰まった都市部」という表現でも伝わるかもしれないけれど、稠密と書いたほうがすっきり読める。また、流行語大賞にノミネートされた「忖度」という言葉も難語だと思うのですが、「他人の気持ちを推し量ります」というより「忖度する」といったほうが文字数の差ですっきり入ってくると思うのです。

 とにかく文章が長いと読むのに時間もかかり、脳内での情報処理に使うエネルギーも多くなりますから、長い表現を短くできるなら、難語でもよいのかなと思ったりします。しかし、難語じゃなくても常用漢字の中で簡単にできるなら無理して難語にしなくていいんじゃねーの。そんなことを感じ取る本日の一冊でした。

本日紹介した本

小説の言葉尻をとらえてみた (光文社新書)

小説の言葉尻をとらえてみた (光文社新書)

 

おすすめ関連本

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (電撃文庫)
 
舟を編む (光文社文庫)

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