本を熱いうちに読む

厚みのある本は苦手

『図解 モチベーション大百科』を読んでモチベーションを上げる

本日の一冊は「図解 モチベーション大百科」。

 帯にあるように多くの実験が紹介されていて、そこから著者なりの解釈を加えた説明が書かれた一冊。なかには読んだことがある本から紹介されている実験内容もあったが、図解でわかりやすくなっていて、心理学や行動経済学を学んでいる人にとって最適な本であろう。ただし注意するところもある。「図解モチベーション大百科とは?」と書かれたページにある本書の概要をまとめたところにそれは書いてある。

編著者による説明は、ビジネスの現場に沿うように解釈された独自のものであり、実際の研究者の意図とは異なる場合がございます。

 つまり、研究者の考えた結果を無視して自由に解釈をしているため、本当にビジネスの現場で使えるかは微妙なところ。実験内容、結果については非常にタメになるが、著者の解釈は参考程度にとどめておくのがよいだろう。本記事では気になった実験をいくつか紹介しておく。

目次

キャンディ効果

架空の患者の症状や病歴を読み上げ、経験豊かな医者たちに診断してもらいます。

Aチームの医者には・・・事前に、なにもしない。

Bチームの医者には・・・事前に、医療関係の記事を読んでもらった。

Cチームの医者には・・・事前に、キャンディをあげた。

結果

Cチームは、Aチーム、Bチームと比べ、2倍の速さで正確に診断した。

 この実験はショーン・エイカーというポジティブ心理学者が紹介している実験です。キャンディは食べてもらったわけではなく、ただあげただけですが、キャンディを一つもらうだけで仕事の速度があがり、正確に判断できるという結果。いい気分であることは非常に大切であることがわかる実験です。キャンディ一つで仕事の速さがあがるなら、試さない手はないですね。

消費ゴール

被験者たちに今の幸福度について点数をつけてもらいました。

被験者が旅行を「計画」するだけで、幸福度は高まりました。

しかもその気分は、平均して8週間持続しました。

しかし旅行が終わると、幸福度はまたたくまに普通レベルに戻りました。

その旅行による幸福度が「最高」だった人も、2週間で元にもどりました

 ごほうびは人を幸福にしますが、その効果は計画している時に高まっていくようで、実現したあとは幸福度は下がります。このことから、ごほうびは2カ月ごとに用意することが幸福度を保つためには必要とのことですが、このごほうびはどの程度のものがよいのでしょうか。実験では旅行を計画とのことですが、2カ月ごとに旅行に行くのもそれはそれでお金も時間も必要で大変そう。おいしいものを食べに行く計画でも2カ月持続するのだろうか。近場だと2カ月も待たずにすぐ行きたくなりそうですが・・・。とにかく実現したら幸福度は下がるのみですから、新たなゴールを設定していくことが必要そうです。私も近々旅行に行く予定がありますが、それを実現したらまた新たなゴールを設定することを忘れないようにしたいです。

罰金と報酬

テストがはじまる直前、小学生たちに以下のように伝えます。

Aチーム 子どもたちに20ドルを渡す。そして「前回よりも点が下がったら、その20ドルを取り上げる」と伝える。

Bチーム 「前回よりも点が上がったら、試験後すぐ20ドルあげる」と伝える。

Cチーム 「前回よりも点が上がったら、試験後20ドルあげる。ただし1カ月後」と伝える。

Dチーム 「前回よりも点が上がったら、トロフィ(3ドル相当)をあげる」と伝える。

Eチーム なにもあげない。ただ「前回よりもいい点を取れ」とはげます。

結果

全体の成績は100点満点中、平均して5~10点上がった。

Aチームの成績の方が、Bチームよりもはるかに上がった。

Cチームの成績は改善しなかった。

Dチームは、少額2,3,4年で平均して12%上がった。

 報酬は「成功したらあげる」より「失敗したら取り上げる」方が効果があるという解釈になっていますが、人間というのは新しいものを得るよりも、持っているものを失わないためのほうがモチベーションが高まるようです。これは基本的に、人は現状維持や安定を目指して生きているからとあります。この実験はプロスペクト理論に似ているように思います。この理論もまた「人は得をするよりも、損をしたくない思いのほうが強い」というもので、人間は損失を嫌うということがわかります。テストで良い点を取らせるためにはテスト前にゲームを取り上げず、もしテストで良い点がとれなかったらゲームを取り上げると伝えたほうがテスト勉強のモチベーションを高めることになるでしょう。

損失回避

被験者である学生のうち半数を無作為に選び、大学のロゴマークが入ったマグカップをプレゼントしました。

マグカップをもえらなかった学生に

「このマグカップを手に入れるために、いくらなら払っていいか?」とたずねると、被験者たちが答えた値段の平均は2.87ドルだった。

マグカップをもらえた学生に

「このマグカップをいくらなら売ってもいいか?」とたずねると、被験者たちが答えた値段の平均は7.12ドルだった。

・・・つまり、人はたった数分間でも所有すると、愛着を持ち、手放す痛みが生じる。

 さきほど紹介した実験と似たような感じですが、人は一度所有してしまうとそれを手放すのに多大なエネルギーを要することになるということがわかります。著者の解釈では「愛着」と表現されています。手放すのが難しいということから、生活レベルを一度上げてしまうと、下げるのはとても難しいということですから、何かを得るときには、それを手放すときのことも考えて決断したほうが良いですね。

プロトタイプ

海への原油流出事故をきっかけに、海鳥保護のための寄付をつのる実験がおこなわれました。

Aチームには・・・

「2,000羽を救うためにいくら寄付するか?」とたずねる。

Bチームには・・・

「20,000羽を救うためにいくら寄付するか?」とたずねる。

Cチームには・・・

「200,000羽を救うためにいくら寄付するか?」とたずねる。

結果

Aは平均80ドル、Bは平均78ドル、Cは平均88ドル。鳥の数と、寄付金額にはほとんど関係がなかった。

2千羽も、2万羽も、20万羽も「たくさんの鳥」。数字がこれだけ違っても受ける印象が同じであれば、行動に差は生まれないとのこと。印象をどう与えるかというのは非常に大切な問題です。ビタミンC1000mg配合と書かれた飴やサプリもよくよく考えるとビタミンC1gです。1gと1000mgなら、同じでも1000mgのほうがたくさん入っているような印象を受けます。印象に操作されないよう気を付けようと思って、なかなか意識できないですが、印象を操作できる立場にいるときは、この印象を重要視しない手はありません。

おわりに

 以上5つの実験を紹介しました。モチベーションというのは、見えないところで働く力で、うまく活用したくてもできない場合があります。課題があるのにモチベーションがなかなか出ない。そんな時は本書を読んで、少しでもモチベーションが高まる方法をとれれば良いのではないでしょうか。100の心理・行動実験が図説でまとめられている本も珍しく、最近読んだ中で一番の良書です。欲を言えば、もっと研究者の意図にあった解説があればよいのですが、そういった本も図説で出ないでしょうか。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 おしまゐ。

本日紹介した本

図解 モチベーション大百科

図解 モチベーション大百科