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学習とパフォーマンス『パフォーマンスがわかる12の理論』

本日の一冊は「パフォーマンスがわかる12の理論―「クリエイティヴに生きるための心理学」入門!

 前回の記事から引き続いて「パフォーマンスがわかる12の理論」より気になったところをご紹介しておきます。前回はモチベーションとポジティブからパフォーマンスを見ましたが、今回は学習からパフォーマンスについて見ておこう。

学習とパフォーマンス

 学習する目的は高いパフォーマンスをすることにあると思うのだが、パフォーマンスが高くても学習がきちんとできない時もある。それを端的に表すのが一夜漬けだ。

一夜漬けで勉強したために試験ではある程度の成績が取れたけれど、試験が終わってからしばらくしたらほとんどの内容を忘れてしまうという経験は誰にでもあるだろう。これは、パフォーマンスは高かったけれども、きちんと学習できていなかった好例である。

 学習をサポートする方法は多くの実験で明らかになってきており、本書でもいくつか紹介されている。その一つに、練習のブロック化は学習効果がないというのがある。ブロック化とは、前半は〇〇の学習、後半は〇〇の学習とわけることで、もう一つランダム化という学習法がある。こちらは特にわけることなくランダムで学ぶことだが、短期的なパフォーマンスではブロック化のほうが成績は良いが、長期的な面ではランダム化で学習したほうが成績はよくなることがわかっている。このランダム化の学習は「分散学習」と呼ばれている。もし長期的な学習を目的としているならば、ブロック化した学習よりも分散学習をしたほうが良いのである。

文脈を変えた学習

 例えば数学の学習では、公式を覚えて似たような式を多く解くことによって公式の使い方を覚えたり、解き方がわかるようになる。しかし、少し文脈が変わるだけで解き方がわからなくなったりする。これはスポーツの場面でも起こる。ひたすらサッカーゴールにシュートをする練習をしていたとしても、いざゴールキーパーが立つと入らなくなったりするといったことだ。では、こういった場面でも落ち着いて高いパフォーマンスをあげるにはどうすればよいのか。それはさまざまな文脈で学習することが大事なのだ。

未知の推論課題(たとえば「胃の悪性腫瘍を健康な組織に影響を与えることなく破壊するにはどうすればよいのか」といった課題)を解くような場合、似たような問題をいくつもの異なった文脈で解くと、こうした未知の課題の推論課題の成績が高まることは古くから知られている

 また、もう一つ紹介されている実験では、機械を一定の強さで押すように指示された被験者たちの中でも、常に同じ強さで押すよう指示された被験者よりも、同じ強さよりも少し強い力、少し弱い力といった異なる文脈のある指示があった被験者のほうが長期的な学習では成績がよかったとある。

よく「練習は本番の気持ちで」といわれる。この言葉自体は、そういった心構えではなく、本番を意識して具体的に練習方法をさまざまな文脈で行うことの重要性を示している。「本番の状況を意識して、練習に多様性をもたせる」ことが重要なのである。

 特に最後の「本番の状況を意識して、練習に多様性をもたせる」という一文は非常に心に響いた。本番がどういった状況になるかはわからない。スポーツの場合は雨天かもしれないし風が強いかもしれない。試験においては、当日体調を崩しているかもしれない。そんな場合でも高いパフォーマンスをあげるには、練習の時点から、雨天や風の強い日にも練習してみたり、風邪を引いても勉強をしてみたりと試してみる必要がある。内(家)と外(試験場)では環境が異なる。そのことをもっと意識して学習に励むことが高いパフォーマンスをあげるにおいて大事となってくるのだろう。

勉強のしすぎの効果

 「過学習」の実験というのがある。まずはそちらを紹介しよう。

この実験では、実験参加者は二群に分けられ、あるリストの単語を繰り返し勉強することで、そのリストの単語をすべて覚えるように教示された。片方の群の参加者は、すべての単語をきちんと思い出せるようになった時点でリストの勉強をストップした。もう一つの群は、リストにあるすべての単語をすべて思い出せるようになっても、さらにリストを繰り返し勉強するように教示された。具体的には、すべての単語を思い出せるようになった練習回数と同じだけ、リストをひたすら再練習するように教示された。これを過学習と呼ぶ。

 どちらの群も単語のリストをすべて覚えているわけだからパフォーマンスの高さは100%ということになり、これ以上伸びることはない。だから過学習をしたところで意味はないと思うかもしれないが、そうでもないことがわかっている。

この実験では、単語の記憶成績を一日から二十八日の間隔をおいて測定しているが、どの間隔においても、過学習をした群のほうが、そうでない群よりも記憶成績が良かったのである。(中略)この結果は、パフォーマンスが頭打ちになっても、学習が必ずしも頭打ちになっているわけではないことを示している。

 この過学習の結果は、運動学習においても同じであることが実験で示されている。運動の場合は、疲労やパフォーマンスの低下が起こるだろうが、それでも練習を続けることで、長期的な学習は促進されるということらしい。あと1回の精神で運動をすることは身体に良さそうだ。

おわりに

 分散学習、練習に多様性をもたせる、そして過学習。この3つを意識して学習方法を変えるだけでも、学習の効果は高く、そして良いパフォーマンスをあげることができるようになるだろう。

 おしまゐ。

本日紹介した本

パフォーマンスがわかる12の理論―「クリエイティヴに生きるための心理学」入門!

パフォーマンスがわかる12の理論―「クリエイティヴに生きるための心理学」入門!