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昔の適応は今の不適応を招く『人はなぜ太りやすいのか』

本日の一冊は「人はなぜ太りやすいのか――肥満の進化生物学

 肥満という言葉をよく耳にするようになった。メタボやBMIという言葉もあるし、それこそ世の女性はダイエットを一度はしたことがあるそうだ。体重を管理することは健康への道のりとして必須だと思うが、そもそも人はどうして太りやすいのだろうか。また、どれだけ食べても太らない人もいる。そういったなぜに本書は応えてくれる。

 本書は生物学の本であって肥満対策の本ではない。

 本書は、どのようにすれば肥満を予防できるか、肥満を「治療」できるかといった問題に解答を与えるものではない。ヒトがなぜ、そしてどのように肥満になるかを理解しようという試みなのである。(中略)

 著者らの見解は、肥満の増加は、ヒトという種の適応的生物学的特性と現代という時代環境との間のミスマッチに起因するというものである。

 適応的生物学的特性と漢字が並んでいるが、一言でいえば脂肪を蓄えやすい身体だということだ。昔は食べ物が少なかった。一日一食の時代もあっただろう。そうした中で生きていくには、エネルギーを身体に蓄えておかなければならなかった。そうして少ない食べ物で脂肪、エネルギーを蓄えて生きてきたのである。こういった特性が遺伝し続け、食べ物があふれた現代でも、ヒトの脂肪を蓄えておく力は私たちの体に存在している。そうしてミスマッチが起こっていく。

 肥満になりやすい遺伝型が、ヒトの進化の過程で選択的に選ばれてきた可能性は高い。しかし外部環境がそうした表現型の発現を抑制していたから、顕在化することはなかった。遺伝的素因にかかわらず環境が体脂肪の蓄積を抑制してきたといえる。

 そもそもヒトは太りやすい体質だった。それは昔からそうだったのかもしれない。しかし昔は食べるものがなかったから、太るということはそうそうなかった。だが今や食べるものは先進国などでは溢れており、いつでも好きなものを食べられる時代になった。そうして食べ続けたことによって人は太っていくのである。

 つまり、近年肥満が問題となっているけれど、そもそもヒトは遺伝的から見て太りやすいのである。

 訳者あとがきにはこのように書かれている。

環境とは、常に変化し続けるものである。とすれば、どのような適応であれ、過去の適応は現在の不適応をもたらす。

  昔なら脂肪を蓄えやすい身体でよかった。そうでなければ生きていくことはできなかった。そういった時代にヒトの身体は適応してきた。しかし、今やこの身体が現代においては不適応な身体となってしまった。この考え方はいろいろなことに当てはまりそうだ。

 ネット社会によって人々の生活は激変した。それでも人は新しいことに適応していく。この肥満にもヒトの体は何十年もかけて適応していくのかもしれない。肥満率が高くなっていくということは、いつか肥満が標準になる時代が来るということかもしれない。肥満は病気を招くため減らす方がよいかもしれないが、肥満はさらに増えていく可能性が高い。人はそもそも太りやすい身体なのだ。それについてもっと人は意識した方がよいのかもしれない。本書は進化生物学とあるように、化学や生物のことが多く書かれている。肥満の歴史やシステムを知りたい方にはとてもおすすめである。

 おしまゐ。

本日紹介した本

人はなぜ太りやすいのか――肥満の進化生物学

人はなぜ太りやすいのか――肥満の進化生物学