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サニーブレイン『脳科学は人格を変えられるか?』

本日の一冊は「脳科学は人格を変えられるか?

 前回の記事では「アフェクティブ・マインドセット」について紹介した。今回は「サニーブレイン」についてまとめておく。

目次

ドーパミンオピオイド

 サニーブレインは2つの物質が重要である。

サニーブレインの中でもっとも活発にはたらいている科学的メッセンジャードーパミン、そしてアヘンと似たはたらきをする脳内物質のオピオイドだ。側坐核を構成する細胞にはこのドーパミンオピオイドのどちらかが含まれており、これらの神経伝達物質の活動こそが、人間がさまざまな経験を楽しんだり欲したりするのを促している。これらは、サニーブレイン全体のエンジンルームでいわばオイルの役目を果たしており、楽観をつくりあげる基本要素のひとつだ。

 このドーパミンオピオイドの作用は少し異なる。

生物学上好ましい経験をより輝かせ、「気持ちよく」見せるのがオピオイドのはたらきなのに対し、ドーパミンはその経験を「欲して」反復させる作用をもつのだ。

 依存症を語る上で、ドーパミンの話は欠かせないわけだけど、ドーパミンは依存症の対象を欲する役目を担っているということ、そしてドーパミンは快感を強くするのではないという事実ははじめて知った。つまりドーパミンを抑えることができれば、欲したいと思う気持ちが減らせて、依存症を助けることができるのではないか。これらは依存症の本でも読んで再確認しておこう。

快感の維持

 話はレイニーブレインについてに変えるけど、抑うつの人は快楽を感じられないのではなく、快感の維持が不得手だということがわかっている。ネガティブな人は、快楽を感じてもすぐにその裏に潜む小さな不安を見つけネガティブな反応を増大させているのではないかと思う。そうやって世界は闇に包まれていることを考えることを強いられているのがレイニーブレインの人たちなのだ。

サニーブレイン「自分は平均より上」

 レイニーブレインの話は次回の記事にまかせることにして、話をサニーブレインに戻そう。前回の記事で、コップの半分に水が入っていることについて、サニーブレインの人は「まだ半分も水が入っている」と考え、レイニーブレインの人は「半分しか水が入っていない」と考えると書いた。この例えは有名だが、サニーブレインについて知る有名な現象はまだある。それが自分の能力を平均より上に見てしまうことだ。

 ためしに、次の質問に答えてほしい。

 あなたは、自分が平均より高い月給を稼ぐ可能性はどのくらいだと思っているだろうか? 正直に、本気で答えてほしい。あるいはあなたは、自分が平均的な人より多くの生涯賃金を稼ぐと思っているだろうか? それとも平均より少し低いと考えているだろうか?

 おそらくあなたの回答は「平均より多い」のはずだ。

(中略)

イギリスの心理学者スチュアート・サザーランドは著書『不合理』の中で、ある調査に参加したドライバーのうち95パーセントが「自分は平均より運転がうまい」と回答したと報告している。

 95パーセントが平均よりうまいと感じているとなると、まず平均的な運転はどのような技術であると考えているのかが気になるところです。人々はどこかで平均よりいい人生を送っていると考えているのかもしれません。そうやって楽観的に過ごすことはよいことで、男性はその楽観から恋愛を成就させるらしいのです。

男性のポジティブ恋愛

 ある大学の心理学者が実験で、初対面の男女で49組のカップルをつくり、数分間会話をしてもらいその様子をビデオにおさめました。その後、別の男女にそのビデオを見せてました。すると、ビデオテープを見た女性は、会話をしている女性は一般的な愛想のよさと評したけど、ビデオを見た男性は、会話をしている女性から男性に対する性的関心がでていると解釈をしたそうです。これがどの程度の割合で出現したのか書かれていないのが気になるところですが、男性は女性の友好的態度を性的な誘いと勘違いしやすいようです。この事象について、心理学者マーティ・ハーゼルトンはこう語っています。

男性は進化論的な観点からいえば、できるだけ多くの相手と交尾しなければ生存競争を勝ち残れない。だからたった一回でも「つがう」チャンスを逃すことは大きな痛手となる。いっぽう相手から拒絶される痛みはほんの一瞬で、さして高くはつかない。だから男性にとって自分の魅力を過信するのは、きちんと採算のあう行為なのだ。

 つまり男性はどこかで自分がモテるという楽観的な考えを持つことが大切で、その楽観さがないと女性からのアプローチにもうまく対応できないということではないかと思います。こういう男女の差からも、男性は女性を好きになりやすく、男性側から告白するのが一般的になったのではないかと考えたりします。

ポジティブシンキングの危険性

 そうした楽観さ、ポジティブさが必要なことはわかりましたが、「ポジティブ・シンキング」というキーワードには注意が必要であると著者は言います。

楽観やポジティブ・シンキングの威力を賛美するびっくりするような主張は、そこらじゅうに掃いて捨てるほどある。「必要なのはただポジティブに思考するだけ。そうしていれば良い出来事は勝手に起こりはじめる」というやつだ。

 こういう類の本はいくつか読んだことあるけれど、自分には合わなかった。ただポジティブに考えてるだけでよい出来事が起きるわけないだろ!と思っている。そうして、この本にある一文を読んでハッとした。

人がどんな生活を送ることになるか、その質の差に深くかかわるのは、「ポジティブに思考する力」というよりも、「ポジティブな行動を起こす力」だ。

 これら2つは繋がっているけれど、しかし思考と行動は違う。どんなにポジティブに考えていても、行動しなければ良い出来事は起きないのである。例えば、病気になったとして、「どうにかなるだろう」とポジティブに考えているだけではいけない。「病気になったけど治したいから〇〇しよう」といった行動が伴うことがサニーブレインには必要なのだ。人生どうにかなると思っているだけでなにもしないといつの間にか下へ下へと落ちていく。それでもポジティブ思考は消えないから、周りからはどうにもならないぐらい落ちてもなぜか前向きだ。対して、行動が伴うポジティブ思考の人は前へ前へ進む。そうして成功を手に取っていくのだろう。

ポジティブ心理学の歴史

 心理学はもともとネガティブな反応をどうにかしようと始まった学問だ。不安や抑うつ、依存症などの側面を研究対象にするのが心理学。しかし、最近では「幸福」や「楽観」をもたらすのはいったい何なのかを解き明かす研究もおこなわれている。確かにポジティブ心理学という単語はここ近年目にするようになった。ネガティブな事象をどうにかするのではなく、ポジティブな事象はどうしたら起こるのかを研究し、ネガティブな事象を対処する。ポジティブが最強ということではないが、ポジティブでいることは生活の質を高めることは確かだ。それでも、人間にはネガティブなレイニーブレインが存在している。次回はそんなレイニーブレインについてみていこう。

 おしまゐ。

前回の記事

arigatoubook.hatenablog.com

本日紹介した本

脳科学は人格を変えられるか?

脳科学は人格を変えられるか?