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心の姿勢 『脳科学は人格を変えられるか?』

本日の一冊は「脳科学は人格を変えられるか?

 あなたがものごとをどう見るか、そしてそれにどう反応するかによって、実際に起きることが変化する。

 それが、心理学が解き明かしたシンプルな事実。

 上記の引用は本書の序章のはじめにある一文。本書のタイトルは「脳科学は人格を変えられるか」とあるが、その内容は心の姿勢「アフェクティブ・マインドセット」についてだ。ものごとはものごととして目の前に存在するだけで、重要なのはどう反応するか。そしてその反応、つまりは心の動きには2種類あると著者は言います。

 脳の中には思考をつかさどる新しい領域と、原始的な感情をつかさどる古い領域があり、両社は神経線維の束で結ばれている。この結びつきが、さまざまな心の動きを生む。ネガティブな心の動きとポジティブな心の動きは、それぞれ別の回路が担当しており、前者の回路を「レイニーブレイン(雨天脳)」、後者を「サニーブレイン(晴天脳)」とこの本では呼ぶことにしよう。

 簡単に言うと、半分まで水が注がれたコップを見て「半分しか水が入っていない」と思うか、「半分も水が入っている」と思うかどうかということだ。

 さて、本書はとても興味深い話がたくさん書かれていて、すべて書くと記事が膨大な量になってしまうので、記事を数回にわけて書きたいと思っている。まずは本書の中心にある「アフェクティブ・マインドセット」の基本について書いておこう。

アフェクティブ・マインドセット

 日本語訳では「心の姿勢」と書かれているアフェクティブ・マインドセット。この根本にあるものは人が何に注目し、何を無視するかです。

 現代社会の情報の洪水の中で何に注目するかは非常に重要で、この選択を行う能力は、心の安定のためにも非常に重い意味を持つ。認知心理学者は、この「何に注目するか」を選ぶ力を「選択的注意」と呼ぶ。

 本書では例えとして、本を読むのを少しの間やめて耳に聞こえてくるものに心を集中してみようとある。意識を耳に傾けると、車の走る音や鳥の鳴き声、人々の声などが聞こえてくるだろう。これらの音は常にあるわけだが、私たちはそれに注目していないから気にならない。この選択的注意がないと、あふれる洪水に人は溺れてしまう。

 そしてアフェクティブ・マインドセットは記憶についても影響を与える。小さい頃の思い出を話してほしいと頼むと、楽観的な人は幸せで心が浮きだつような話をするだろうし、悲観的な人は悲しくて暗い話をするだろう。

 心理学者のゴードン・バウアーは、催眠術を用いて実験を行った。

 被験者を催眠で幸せな(もしくは悲しい)気分にさせ、そのうえで今度は彼らにたくさんの言葉が書かれたリストを見せたのだ。リストの中には、「パーティー」「幸せ」「喜び」などポジティブな気持ちをかきたてる言葉もあれば、「がん」「死」「失敗」などネガティブな言葉もある。

 実験の結果は明白だった。幸せな気分のときにリストを提示された被験者はよりポジティブな単語を記憶し、悲しい気分だった被験者はネガティブな単語を記憶していた。

 このような実験から、記憶は単に過去に起きた出来事をしまっているというわけではないということだ。自分に気持ちに合ったことは記憶に残りやすいし、逆は残りにくい。だから不快な気持ちで行ったパーティーは、そこで楽しいことがいくつかあったとしても、総合的に不快だったと感じるだろう。

 そして、このアフェクティブ・マインドセットは性格にも強く影響する。

いつも活発で外向的で、愛想のよい子どもを思い浮かんでみよう。そういう子に接するとき、まわりはどんなふうにふるまうだろう? 引っ込み事案であまり笑わない子どもに対するよりも、おそらくたくさん笑いかけ、たくさんスキンシップをしているはずだ。子どもがそうしてずっと外向的にふるまっていれば、その子をとりまく世界は自然と、内向的な子をとりまく世界よりもポジティブなものになる。

 そしてこのあとの文章がとても心に響いたので紹介したい。

子どもがどんな社会に生きることになるかは、運や偶然では決まらない。その子の感情のスタイルが、その子をとりまく世界を規定する。

 外向的=サニーブレインで、内向的=レイニーブレインと書かれているところには違和感を覚えるが、「感情のスタイルが世界を規定する」という一文に心を奪われましたね。

2つの心の動き

 2つの心の動き「サニーブレイン」「レイニーブレイン」。これらの根底にある回路は、可塑性が高い、変化しやすい部分だという。

 ストレスや憂鬱な出来事が長期間つづけば、あるいは幸福感や喜びが長期間つづけば、脳の特定の部分に構造的な変化が起きる可能性がある。

 つまり、人間の脳には変化する可能性があり、じっさいに変化できるのだ。

 次の記事では、サニーブレインについてご紹介したい。

 おしまゐ。

本日紹介した本

脳科学は人格を変えられるか?

脳科学は人格を変えられるか?