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食べ物と太った人と性行為の嫌悪について『あなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのか』

本日の一冊は「あなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのか

 気持ち悪いものや、醜いもの、普通ではないものを見ると嫌悪感をいだくことがあるかと思います。本書ではその嫌悪感がいったいどのような仕組みで発生するのか、そもそも嫌悪感とはなんなのかを教えてくれる一冊になっています。本記事では1章の「食」について、そして5章の「ヒト」、さらに7章にある「性」の嫌悪感について気になったところをまとめておきます。

目次

食べることと嫌悪感

 第1章は「食」に関する嫌悪感。洋書では例え話から始まることが多いですが、本書でもまず登場するのが納豆を食べるアキコさんとチーズを食べるミーアさん。日本人の中にも納豆が苦手という方がいるけれど、海外から見るとこの納豆はそうとうひどい匂いらしい。

少なくとも西洋人にとって納豆のにおいは、アンモニア臭とタイヤを燃やしたにおいがマリアージュ、つまり組み合わさったように思える。

 ここまで言われても納豆が好きだしよく食べる。逆に西洋ではメジャーであるチーズが苦手だったりする。このような好き嫌いは文化によるものが大きい。また、世界を見るとこれ以上に腐敗臭がする食べ物や刺激的な食べ物が存在する。その多くは発酵食品である場合があるし、それらを見て嫌な感情を抱くことがあるだろう。しかし、それは無理もないことだと著者はいう。

最も原始的な嫌悪感情の生来の目的は、私たちが、腐敗して毒性をもつ食べ物を口にしてしまうのを避けさせることにあるからだ。

 これに加えて、毒ではないとわかっていても嫌悪感情を抱く食べ物はある。しかも、その食品、例えば納豆やチーズにハマる人も多い。これはどう説明したらよいのだろうか。

ほとんどの場合、何かに嫌悪感をいだくか否かというのは、見る側の気持ちが決めるものだからだ。

 嫌悪感を抱く対象は様々だ。食べ物以外では動物や植物、模様や形だけでも嫌悪感を抱く場合がある。それらは見る人によって嫌悪を抱く人、抱かない人にわかれるため、すべての人が嫌悪する対象はなさそうだ。

 本書では、納豆以外にも日本の不思議な食べ物を紹介している。これを読んであなたは嫌悪感を抱くだろうか。

日本人は独自に編み出したフレーバーのアイスクリームを好む。しかし西洋人は、ディナーにお寿司を食べた後で、抹茶アイスの天ぷらを食べただけでも、充分に冒険した気になる。だから、タコ焼き、牛タン、手羽先風味のアイスクリームなど試す気にはとてもなれない。日本では、思いつく限りのものは何でもーそれが炭だろうとチューリップだろうとビールだろうと、スイーツや舌触りのよいアイスクリームのフレーバーとして、ブレンドしてしまうのだ。

 どうしてそれを風味にしたんだというアイスクリームは全国各地に存在する。多くはご当地メニューをアイスクリームにする場合だと思うが、私はこのようなアイスクリームを食べたことはない。正直好きではない。嫌悪まではいかないけれど、本文にもあるように抹茶アイスの天ぷらを食べただけでも充分な冒険である。というかアイスの天ぷらってどういうことだと思って調べたところ、けっこうあるらしい。日本人の味覚はすごいところまできているようだ。日本から見れば世界の食べ物はすごいなと思うのだが、世界か見れば日本の食べ物がすごいことになっているように見えるのだから、私もまだまだ視野が狭いのだな。

 1章ではこのほかに、食事のルールが存在する理由を文明化した人間と野蛮な獣の間に一線を画すためと説明したり、殺人が大罪となっているのは人間の共食いを防ぐ意味もあるなど、食と嫌悪に関することが多く紹介されています。

太った人と嫌悪感

 声を大にして言うことはないけど、太った人が苦手である。どこからが太った人なのかは個人差があると思うのだが、いわゆるぽっちゃり系は問題ない。ただ、どう見ても太っているだろと言われる体型は苦手だ。隣に座っただけでもストレスになってくる。どうして太った人にここまで苦手意識を持つのだろうと考えていたが、こう思う人はけっこういるらしい。

太っている人は不潔で、汗っぽく、におううえに、頭が悪くて、うだつがあがらず、だらしがなく、意志が弱くて怠け者だとレッテルを貼られている。太っている人と結婚するくらいだったら、横領犯、コカイン使用者、目の見えない人と結婚するほうがましだと、大学生らはきっぱりいう。

 では、なぜ太った人にここまで嫌悪感情を抱いてしまうのか。ある実験では肥満への拒絶反応は、病気への嫌悪感に関連していることがわかったそうだ。

ブリティッシュコロンビア大学の学生の行った実験では、「肥満」と「病気」、そして「痩せている」と「健康的な」という概念を反対の意味と結びつけたところ(太って健康的、痩せて病気)、被験者は「痩せた」と「病気」よりも、「太った」と「病気」のほうにより強い結びつきを感じていたことがわかった。 

 なんのこっちゃと思う実験かもしれないが、この実験の説明を引用すると長くなってしまうので、この実験を受けることができるサイトがあるのでそれを紹介する。

「潜在」プロジェクト・オンライン:日本語版

https://implicit.harvard.edu/implicit/japan/takeatest.html

 このページの一番下にある次に進みます。を選択するといくつかのテストを受けることが可能だ。私は体重とセクシャリティについてテストを受けてみたが、まあ自分が想定していた結果だった。例えば、体重については「あなたの結果データが示すことは
太った人よりもやせた人に対する中程度の自動的な選好」でした。

 この実験を応用したのが上に引用した実験なのだろう。「良い」「悪い」の代わりに「健康」「病気」にしたところ、「太った」と「病気」のほうが強い結びつきがあることがわかった。これらの実験とさらなる追跡調査でわかったことはこうだ。

太っている人を見ると病原菌や病気がひそかに想起させられるために、嫌悪感をいだくのである。また、肥満はたいがい醜いとも考えられており、醜さもまた、病気を連想させるがゆえに疎まれる。

 自分がどのような考えを持っているのか知りたい方はぜひ上記のテストを受けてみてほしい。最初はやり方がわからず時間がかかるかもしれないが、一度理解すれば5分もかからないだろう。

性行為と嫌悪感

 7章 性欲と嫌悪感でも日本の事例が紹介されている。食べ物の場合は納豆だったが、性の場合はこれ以上にすごい内容だった。

55億ドル規模といわれる日本のアダルト産業は、排泄物や道ならぬ行為を混然と見せるのを楽しんでいることにかけては、他国の追随を許さない。日本の社会というのは表向きは慎ましやかで秩序があり、礼儀正しく謙虚だが、ひと皮剥くと奔放であられもない性であふれかえっている。(中略)ー日本のポルノは、エロ・グロを妄想することにかけては果てしなく自由であるらしい。

 ここまで言われている日本の性についてだが、なぜここまで自由になってしまったのか。著者はこう考えている。

表向きは性的なものを厳しくコントロールしている日本人であればこそ、そうした葛藤を、性的に想像できる最低最悪のことで解放せざるを得ないのかもしれない。

  抑圧が強い分、解放にも強い力が加わってしまうということだろう。当てはまる気もしないこともないが、他国の事情をあまり知らないので日本だけではないと信じたい。

 この他にも性行為は動物的な行為だから、動物っぽさを想起する性行為を人には見られたくないという心情の話や、男女問わず月経にはネガティブなイメージが存在していること、女性は男性よりも同性愛者に嫌悪を抱かないといった話も取り上げられている。

 3つの嫌悪について見てきたが、何に嫌悪感を抱くのかは見る側が決めるとあるように、個人差が大きい。だからなぜ嫌悪を抱くのか説明は難しそうだが、その国の文化が大きく関わっていることはわかった。日本人はいろいろなことを抑圧しすぎておかしくなってきたのかな、とも思ったりもした。

 おしまゐ。

本日紹介した本

あなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのか

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