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本を熱いうちに読む

厚みのある本は苦手

記憶力がすごい人たちと脳トレの効果『脳はなぜ都合よく記憶するのか』

科学

本日の一冊は「脳はなぜ都合よく記憶するのか 記憶科学が教える脳と人間の不思議

 前回に引き続いてこの記憶に関する本から気になった項目をいくつか紹介していこう。

目次

記憶力がすごい:スーパーレコグナイザー

 この世界には凄まじい記憶力を持つ人がいる。その人たちのことを「スーパーレコグナイザー」と呼ぶそうだ。彼らは顔を見分け認識することに優れていて、特に警察活動では利用価値が高い。

グリニッジ大学のジョシュ・デイヴィスのような人たちは、ロンドンの警視庁と協力し、スーパーレコグナイザーを見つけては採用し、CCTVカメラが撮った膨大な映像をふるいにかけさせることで、そこに写る人物の身元を特定している。要するに、その能力を利用し、群衆や他の入り組んだ映像から、容疑者の顔など、特定の顔を見つけているのだ。

 以前、テレビでやっていた密着警察番組で、容疑者の顔を覚えて街に繰り出し見つけるということをやっていた。その時はパチンコをしていた人の中から、容疑者を見つけて確保していたと思う。それも耳の特徴からわかったとかなんとか言っていて、何千何万人の中から写真と同じ人を見つけるなんてどういう記憶力してんだと思っていた。しかし、あの警察の人はこのスーパーレコグナイザーだったのだろう。この能力を持っていない人には務まらない仕事なわけだ。ちなみにこのスーパーレコグナイザーであるかどうかは「ケンブリッジ顔記憶検査」を利用すれば見極められるらしい。どのくらいの割合でこのスーパーレコグナイザーがいるかは不明だが、彼らの顔認識能力は特別に近いものなんだろう。

記憶力がすごい:エイデティカー

 次に紹介するのは直観像記憶力のある人たちについてだ。彼らのことを「エイデティカー」と呼ぶ。彼らを研究する方法で人気があるのは写真を使用する方法らしい。

見たことのない写真をイーゼルに置き、被験者に30秒見せる(中略)写真を取り除いたあとも、被験者はそれが置かれていたイーゼルを見続けるよう指示される。それから、写真について、できるかぎり説明するよう求められる。直観像記憶力のある人なら、まだ写真が見える、そのイメージの記憶をまだ目の前にあるかのようにスキャンし、じっくり調べることができると言う。

 ただしこの直観像記憶は数分しか保持できないようで、イメージは徐々に消えていくらしい。また、エイデティカーでさえ、誤って記憶することもある。といってもその記憶力が凄まじいことは確かだ。この直観像記憶力とは異なるかもしれないが、探偵学園Qという作品に一度見たものは忘れない女の子が登場する。wikiによると彼女の能力は「瞬間記憶能力」と呼ばれ、その文字のリンクをクリックするとサヴァン症候群の項目に飛ばされる。

 ある論文の推定によれば、直観像記憶力は子どもでは5%、大人では0%らしい。特に、発達障害のある子どもで発生率が高いとされる。これはなぜだろう。

一部の研究者は、直観像記憶力とは実は未熟な記憶力であり、経験したことを抽象的に考え、符号化できるようになる前に使われているものではないかと考えるようになった。これは、子どもの直観像記憶力は、実は発達上の利点ではなく、発達に問題があることを示す兆候だという示唆でもある。

 つまり、直観像記憶力はすごい能力というより、未発達によって引き起こされる症状なのである。ということは、探偵学園Qの女の子もまた脳がまだ発達しきれていないのかもしれない。(確かトラウマかなにかでその能力を得たようなことが書いてあった気もするけれど、記憶は曖昧なものだからたぶん違うだろう。)

脳トレで頭は良くなるか

 スーパーレコグナイザーやエイデティカーは特別な能力であって、凡人には備わっていない。凡人の人たちはどうにか記憶力を良くしたいと考えていて、記憶力をはじめとした脳全般の働きをよくするために最近では脳トレという言葉が出てくるようになった。しかし、脳トレをすることによって頭は良くなるのだろうか。

 という項目が書いてあると、あ、もしかして脳トレしても頭良くならないの?と考えるだろう。まさにその通りのようだ。

2015年には、オスロ大学で障碍者に対する支援を研究するモニカ・メルビィ=ラーバグは、同僚の心理学者チャールズ・ヒュームと共に、ワーキングメモリのトレーニングが有効かどうかを調べるメタ分析を実施した。このテーマで行われたあらゆる研究を調査し、その結果すべてを統計的に分析した。その結果、信頼できるiPhoneのゲームをやっていれば、優れたゲーマーにはなれそうだが、現在のところ、「ワーキングメモリのトレーニングが一般的な認知能力にメリットをもたらすという説得力のある証拠はない」という結論に達した。

 ワーキングメモリというのは短期記憶みたいなもののことだ。私もたまにスマホのゲームアプリの中から脳が鍛えられそうなゲームを見つけては遊んでいた。といってもすぐに飽きてしまうし、こんなんで記憶力が向上したら苦労しないよ!と思っていた。その考えは当たっているようで、ゲームで向上するのはゲームの腕前ということ。

 この本は記憶とはどのようなものかをまとめた本であって、記憶力を向上させるための本ではない。だからこれ以上のことは記されていないけれど、記憶があてにならないということを知っておくことで、様々なバイアスの悪影響から逃れることができる。著者は最後にこう語る。

私たちがなんとか確信を持てるのは、現在起きていることだけだ。

 間違った記憶に影響を受け過ぎず、今を大切に受け入れることが記憶とうまく付き合うコツなのかもしれない。

 おしまゐ。

本日紹介した本

脳はなぜ都合よく記憶するのか 記憶科学が教える脳と人間の不思議

脳はなぜ都合よく記憶するのか 記憶科学が教える脳と人間の不思議