本を熱いうちに読む

厚みのある本は苦手

パクリ!捏造!改ざん!『コピペと捏造』を読んだ

本日の一冊は「コピペと捏造:どこまで許されるのか、表現世界の多様性を探る

目次



はじめに

本書で取り上げるのは「ばれるとまずい」と思っているものや「この程度はいいか」としてコピペしたもの。第1部の最初には江戸時代に書かれた『木曽路名所図絵』の文章と明治の小説家である島崎藤村『夜明け前』の書き出しが似ていると紹介しています。これは永田眞理さんの「大作家は盗作家(?)」の中で指摘しているようですが、昔からコピペは存在していて、さらに現代はネット社会になり、容易にコピペができるようになってしまいました。

教育のコピペ

 コピペや捏造でニュースになるのは、近年では政治家や研究科がレポートや論文でコピペをしたことや、記憶にあるのは五輪エンブレム問題や佐村河内守ゴーストライター問題などがありますが、日常で目につくのは特に教育分野でしょう。栄光ゼミナールが2010年に発表した調査結果ではサイトをコピペし、課題や宿題を作製したことがある子供が52%いるそうです。著者曰く、これ以降このような調査が行われていないようで実態を明らかにするのは具合が悪いのではと考えています。確かに読書感想文を丸々うつせるサイトも存在しますし、それこそ大学の論文を書いてくれるサイトもあると聞きます。私も大学時代にwikiを見たことはありましたが、文章をそのままコピペをしませんでした。wikiを見ながら文章を考えたものです。しかし、今やコピペは当たり前になってきているのかもしれません。本書ではこのようなコピペ捏造に関する事例(小説の盗用や、歌詞、絵画、写真、マンガなど)が数多く紹介されています。気になる方はお読みください。

海賊版

 さて、この本の中で一番心に残ったのがコピペや捏造とはちょっと違う海賊版についての話。海賊版とは違法コピーで複製した映画や書物などのことを指す言葉ですが、著者が大学にいた1960年代頃、研究室には海賊版の教科書や参考書があったと言います。

著者は有機化学出身です。大学にいた頃、研究室では毎週決まった曜日の夕方に有機化学の教科書の輪読が行われていました。そこで使われたのは、1000頁にもなる米国の有名な教科書でしたが、こうした教科書や専門書は当時(1960年代)、すべて海賊版でした。(中略)当時1ドルは360円であり、手数料を加えた書店レートは600円以上でしたので、米国で50ドルの本であれば、3万円ということになります。初任給が2万円の時代ですから、先生といえどもそうは原書を変えるわけがありません。

  日本の戦後の研究開発を支えたのは海賊版だとも言っている著者ですが、そんな著者がケミカル・アブストラクツ・サービスのアジア営業を担当していた1995年頃、中国全土で抄録誌「ケミカル・アブストラクツ」は2部しか購読されていなかったそうです。しかし、中国の大学の図書館には「ケミカル・アブストラクツ」が置いてあったそうです。これらはみな海賊版で、1960年代の日本と同じ環境。その後、中国政府は海賊版印刷所を閉鎖し、新規購読の正式注文が殺到したそうです。このようなエピソードをあげて、著者は2つのことを述べています。

①買う金がなければ、正式版は誰も買わない、②海賊版は、正式版のための地ならしをしている面がある、ということです。

 海賊版によって損失があると言われますが、海賊版がなかった場合に正式版を購入するかどうかは疑問ということです。安いからこそ手に取るのであって、高ければそもそもお金が足りなくて購入できない。だからといって海賊版がいいというわけではないですが、海賊版にも少なからずメリットが存在するのかもしれないなと思います。まあ日本にいる今、海賊版を手に取らなければいけないほど困窮することはないとも思いますけど。

おわりに

 この本にはパロディの世界についてもまとめられていて、パロディというのはバレないと困るもの。パクったのではなくパロディとして作ったのにパロディであると思われないと問題になってしまいます。また、日本のパロディ事情がとても厳しい印象があります。アニメ「おそ松さん」の一話の結果がその厳しさを物語っている気もします。といってもあれはたしかにやりすぎな一面もあるのだけど。コピペ、捏造、オマージュ、パロディ。何かを学ぶことは「まねる」ことだと誰かが言っていましたが、どこまでまねていいのかが曖昧なため、このような問題はこれからも起こるだろう。そもそも作品が生まれ続けていく中で、まったく新しいものなんてものはもはや存在しなくなってきているのではないかと思います。似たようなものを探そうと思えばネットで探せる時代になったし、著作権の問題はあるのかもしれないけど、少し似ているからといって騒いでいたら、作品がなにも生まれなくなっちまうよと思うのでした。

 おしまゐ。

本日紹介した本

コピペと捏造:どこまで許されるのか、表現世界の多様性を探る

コピペと捏造:どこまで許されるのか、表現世界の多様性を探る