本を熱いうちに読む

厚みのある本は苦手

食べきれない料理のような本 『たとえる技術』

 この本は、食べきれない大盛りラーメンのようだ。

本日の一冊は「たとえる技術

本記事の目次

魅力的なたとえ

 一つのキーワードからいくつものたとえが用意してあり、読者の想像力を掻き立ててくれる一冊。 たとえた一文はやたらフォントを大きくし見やすくなっている分、ページ数を稼いでいるけれど、たとえた一文一文には面白さがあり、まさにその場面を想像してクスッと笑ってしまう。まずは気になったたとえをいくつか紹介しておく。

進研ゼミから返ってきた答案のような赤いもみじ

サザエさんのように追いかける

場所取りしているかのように手袋が落ちている

4人席にもうひとり増えた時のように狭い

実はチェーン店だったような絶望

   わかりやすい例えで、このぐらいなら覚えておいても使えそうだ。しかしまあ、このたとえが何百も紹介されているので、後半は読むのが疲れてくる。たくさんのたとえが一気に脳内に溢れてきて脳がパンクしてしまう。そういう意味を込めて最初の一文を作った。「食べきれない大盛りラーメン」。最初は美味しそうと思っていて食べ始めても、食べきれないため後半はきつくなる。そうして残してしまうのだ。本書も後半たとえを読むのが面倒になってきてパラパラ読みした。最後には「高橋英樹が「越後製菓」と〇〇のように正解」といったたとえがあり、高橋英樹がーから始まる文章が8つあり、しかもそのフォントが大きいものだから高橋英樹ゲシュタルト崩壊してきた。人生の中でこれほど高橋英樹という単語を一度に見る機会もないわけで、高橋英樹とはいったい誰だと思い始める。そうしてとにかく終わりたい私はおわりにを読まずして本を閉じた。

たとえの基本

 そもそも人はどんな時に「たとえたい」と思うのか。大きく分けると次の3つが考えられる。

 伝えたい時

 アピールしたい時

 たとえなければいけない時

  たとえば、可愛い子を町で見かけたとする。その可愛い子を友達に伝えるためには、「かわいい子」だけではあまり伝わらない。こんな時に、たとえはブキになる。「アイドルのような可愛さ」「同級生の〇〇さんみたいな可愛さ」「猫のようなかわいさ」などたとえ方はいくらでもある。基本はこの「〇〇のような□□」。このたとえをできるように指導してくれるのが本書なわけだが、まずたとえる基本の一つとして「似た形を探す」がある。

 まずは似た「形」から作るのがわかりやすい。例として「雲」で考えてみる。

 空に浮かぶ白い雲をたとえたい。その場合、雲をAとし、雲の形に似たBを探す。

A 雲

B 綿菓子、煙、ポップコーン、雪、牡蠣、マンガのふきだし、白キクラゲ

 これを先ほどの「BのようなA」という方程式に当てはめる。

 綿菓子のような雲。となるわけだ。これならすぐにたとえができそうだ。例えば、私の目の前にあるスマホに似た形を考えてみた。トランプ、文庫本、手帳、1万円札などなど。これを方程式に当てはめると、「トランプのようなスマホ」「文庫本のようなスマホ」になる。

 今回は形に焦点を当てたが、他には「色」「動き」などもある。最初に引用した「進研ゼミから返ってきた答案のような赤いもみじ」は色であるし、「サザエさんのように追いかける」は動きだ。

 「綿菓子のような雲」といえば多くの人が想像しやすいが、ここからさらにアレンジを加える方法がBに表現を足すことだ。

 綿菓子のような雲

 ↓

 懐かしい味のする綿菓子のような雲

 さきほどのスマホで考えると、「使い古したトランプのようなスマホ」「お茶をこぼした文庫本のようなスマホ」だろうか。意味が伝わるかはさておき、このように何かをたとえるという行為は頭を使う。頭の体操にもってこいの方法かもしれない。

不思議なたとえ

 たとえるキーワードはなんでもある。「広い、狭い、大きい、小さい、長い、短い」から「偶然、待つ、運命的」など多種多様なキーワードからたとえた文章がいくつも載っている本書はとても参考になるが、なかには「?」となるたとえもある。

手袋を外して本気を出した人がいたかのように手袋が落ちている

テレビをつけたらちょうどバルスのところだったような偶然

「キミも能力者なんだろ」と言われたように運命的

  頭をひねりにひねった結果、うまく言いたかっただけなのかと思えるほどのたとえだが、このぐらいのたとえができるようになれば、本当に伝えたい時にうまく伝えられるだろう。

   

 使えるたとえ

 半分以上読み進めてきたが、ここで思うことがある。実際にたとえを使う場面はやってくるのか? 確かにたとえを使えば相手にうまく伝えることができるだろうか。まずたとえるということを頭で考えるのには時間が必要で、会話のなかでたとえを出すのってなかなか難しいのではと考える。しかし、この本の中で唯一といっていい、日常会話で使えるたとえがあった。それが天気のたとえだ。「良い天気ですね」「はい」という会話で終わらないためにたとえがブキとなる。

「良い天気ですね」

「はい」

「まるで新学期が始まるような天気ですね」

「たしかに、そうですね!」

共感を海、会話が伸びる。

「良い天気ですね」

「はい」

「まるでクラス分けの紙が貼られるような陽気ですね」

「・・・そうですかね?」

「あれ? 違いました?」

共感はなくとも、相手の疑問が会話を長くする。

 そして例のごとく、この天気についてもいくつかのたとえ文がでかいフォントで書かれているが、その中の一つが特に気に入ったので紹介したい。 

広瀬美香の曲が流れてきそうな寒さ

 これは、これからの季節にぴったりのたとえでしょ。今冬はこのたとえで気に抜けます。

 また、もう一つ使える場面として、就職活動があげられています。「あなたはどんな人ですか?」という問いに対して、たとえを使おうというもの。本書では、寓話を題材にしており、例えば、「金の斧を選ぶような人間」「銀の斧を選ぶような人間」「どっちも選ぶ人間/選ばない人間」など。これだと4通りだが、他の寓話ならその分表現が増す。

もしも『忠臣蔵』なら47通りのたとえを、『101匹わんちゃん』なら101通りのたとえを作ることが理論上可能となる。

 自分がどんな人であるか他者に言うときは、自分がどのようなキャラかを考えて、それに似た寓話の登場人物に当てはめるといいだろう。ちなみに私の場合は、うさぎとカメに出てくるカメのような人間だ。

視点の変え方

 視点の変え方という項目が本書の最初に出てくる。たとえというより大喜利の練習かなと思ったので最後に持ってきた。『こんな女性アイドルは嫌だ』というお題があったとして、どう視点を変えていくかについて説明がされている。

アイドル → 女性 → 人間 → 動物 → 生物 → 地球

 イメージとしては自分が対象から徐々に離れて、遠くなっていく感覚である。

 まずはアイドルから視点をずらして女性として考える。つまり「嫌な女性」を考えるのだ。すると「電車で化粧を直す」「大声で笑う」などの回答が出てくるので、それをアイドルに当てはめれば「電車で化粧を直すアイドル」「大声で笑うアイドル」といった「嫌なアイドル」の回答が生まれる。(中略)

 もっと離れ、動物も生物のひとつと考える。「嫌な生物」。すると「感染症を媒介する」「毒を持っている」「寄生する」「繁殖力が強く生態系を破壊する」などのアイドルが出来上がる。

  非常にタメになる考え方だったので、最後に取り上げた。たとえる技術は人とのコミュニケーションをとるうえでの武器になるだろう。そして最後に考える。このブログをどう例えようと。そして一つのたとえが思い浮かんだ。

 売れずに終わる芸人のようなブログ

 いつか売れたいと願うも、現実は厳しく売れずに少しの人たちにしか知られない存在として今後もこのブログは続いていくのだろう。

 おしまゐ。

本日紹介した本

たとえる技術

たとえる技術

 

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