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本を熱いうちに読む

厚みのある本は苦手

スマホを1時間使うごとに成績は下がる 『やってはいけない脳の習慣』

  皆さんは、

スマートフォンスマホ)を1時間使うごとに、算数・数学のテストの点数が約5点下がる」

と聞いたら、どう思われますか?

本日の一冊は「2時間の学習効果が消える! やってはいけない脳の習慣

 最初に引用したのは、本書"はじめに"の一文。1時間使うごとに5点下がるそうですが、100点から始めるとスマホを20時間使えば0点ですね。となんとも下らないことを考えてしまいました。この一文は次に紹介するグラフを端的に表す言葉です。

本記事の目次

スマホの長時間使用は成績を下げる

勉強をしていてもスマホを長時間使用している人は、勉強をしていない人より成績が落ちる、という研究結果があります。

 http://ure.pia.co.jp/mwimgs/7/2/-/img_726dea7dff78d9f1c7bf4cb4af8a085049211.jpg

 『やってはいけない脳の習慣』P19より

 例えば右図、数学・算数の成績の場合、勉強時間が3つに分けられていますが、どのグループも、スマホの使用時間が「1時間未満」の人の成績が一番良いです。なぜ、スマホの使用時間"全くしない"よりも"1時間未満"のほうが成績がよいのか、という点ですが、スマホの使用時間を自分でコントロールする自制心が備わっているからと考えられています。

 そして、これが面白いなと思うのですが、右図の成績で、勉強時間30分かつスマホ使用時間1時間未満の人の数学・算数の成績は65点あたりですが、勉強時間2時間以上かつスマホの使用時間4時間以上の人の成績は55点あたりということ。つまり、どれだけ勉強時間を費やそうともスマホの使用時間が長ければ、勉強時間とスマホ使用時間が短い人のほうが成績が良いのです。なぜこのようなことが起こるのかという点について、このような説明があります。

 テレビやゲームで長時間遊んだ後の30分から1時間ほどは、前頭前野が十分に働かない状態になっています。この状態で本を読んでも理解力が低下してしまうというデータも報告されています。(中略)

 つまり、スマートフォンを長時間使用すれば、ゲームやテレビを長時間視聴した後の脳と同じような状態になってしまい、学習の効果が失われてしまうのではないかと考えられます。

 実際にスマホを使っている時の脳の働きを調べたデータがないので、これが本当かどうかはわかりません。しかし、スマホでゲームをしている人、動画も見ている人の場合はほとんど同じでしょう。スマホと一言で済ましていますが、スマホでなにをしているかは人それぞれ、もしかしたらスマホで勉強をしている子もいるかもしれないだろと考えてしまいます。スマホで何をしているかについては言及されていません。しかし、あるアプリに焦点を当てた調査があるので次はそちらを紹介しよう。

LINEはもっと成績を下げる

 ライン。もはや日本人の生活においては必要不可欠となってきましたが、このラインに焦点を当て、先ほどと同じようなデータ処理を行ったものがあります。

http://ure.pia.co.jp/mwimgs/3/e/-/img_3e42351b39632bee4860ca244be951dc50534.jpg

『やってはいけない脳の習慣』P21より

 さきほど見た図より極端な下がり幅です。さきほどの図は、右に下がる角度が45度ぐらいでしたが、この図では90度目指しているのかってぐらい下がっています。スマホの中でもラインの使用は学力低下に強い影響力があることがわかります。

 ところで、平日にライン4時間もしていて、かつ勉強時間2時間も確保している子はいったいどういう生活をしているのだろうと考えてしまうのですが、これってもしかして勉強しながらラインしてるってことでいいのでしょうか。そうすると、ながら勉強の害もまた論じるべきだと思うのですがどうなのでしょう。

 それに対して、ライン1時間未満かつ勉強時間30分未満の子は残った時間を何に使っているのか、という点も非常に気になります。この残った時間をゲームやテレビに費やしていたらどうなるのか。そういう説明は一切なく、とにかくスマホの長時間使用はだめということに焦点を当てているのが本書の残念なところです。新書だから分量を省いた結果なのでしょう。ぜひハードカバーで出していただきたいものです。

 

テレビとゲームがダメな理由

 第2章以降は、ゲーム・テレビ、やる気スイッチ、自己肯定、食事、睡眠、コミュニケーション、読書などの観点から学習効果について解説してあり、これ一冊を読めば、適切な環境を整えることができますが、最初にもあったように、テレビとゲームの悪影響について補足があったので、この記事でも補足していく。

 まずはテレビ。

 テレビを観る時間が長い子どもほど言語性知能が低く、3年後の変化量も小さいことから、その後の言語能力の発達が遅くなってしまう。(中略)

 したがって、長時間のテレビ視聴は、言語能力、運動能力や攻撃性を司る脳の領域に悪影響を及ぼすと考えられます。

 私自身小さいころはよくテレビを観ていて、実際に言語能力低いなと感じています。テレビ視聴が関係していたのか、それとも遺伝なのかと日々思うわけですが、テレビ視聴はほかにも感覚運動領域や視床下部に影響を与えます。すなわち運動能力や攻撃性についても悪影響を与えるのです。テレビを観ると脳領域に変化が起こることはわかりましたが、なぜテレビを観るとそうなるのか、という点についての詳細は書いてありません。そこがやはり本書の残念なところです。

 次にゲーム。

 日常的に長時間ゲームをすると、ドーパミンが過剰に放出され、ドーパミンが作用する部分、特に大脳基底核にダメージを与え、健全な発達を阻害すると考えられます。

 ゲームもまた、言語性知能をはじめ、脳内の各組織の発達に遅れを生じさせます。さらに、ドーパミンの過剰放出によって中毒性が高まりゲーム依存になる可能性も高まってくるのです。

 だからといって、テレビを観るな、ゲームをやるなとは思いません。テレビやゲームから得ることもあるわけで、うまく付き合っていくことが考える力を養うこととなり、脳に良い影響を与えのです。

蛇足ーグラフの値と有意差ー

 本書は、小中高生のリアルを調査から明らかにし、学力向上のためにはどういう生活の見直しをするべきであるかを考察しています。この本を読んでいて思ったのは「論文みたい」で、本書は論文にある結果・考察のような書き方がしてあります。 といっても、結果で使われる図やグラフは統計的に有意なのかが書いておらず、この差が意味のある差なのかはわかりません。大衆向けの新書ですから、そういう細かいところは取り除かれてしまったのでしょうが、そこが一番気になります。

 特に気になったのが下図。

f:id:aritsuidai:20161031110236p:plain

参照:自分を好きになること, 自分に自信を持つことが 学力向上への近道

 本記事では仙台市から出しているpdfから図を引用しました。本書でもほぼ同じデザイン図ですが、矢印はついていませんし。もちろん色もありません。データは同じです。このデータがどのようなものかは割愛しますが、Y軸の数値は偏差値。小さくて見えないかもしれませんが、下は47.5で、上が51まであります。その差は3.5です。たった3.5です。この差に有意差はあるのでしょうか。

  これに似た図を作りました。

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 この図のY軸の最小値を0点にしてみます。

f:id:aritsuidai:20161031111104p:plain

 ほぼ差はないように見えます。この差をあれほど差があるように見せていて、有意差が本当にあるのか。教えてほしいです。だいぶ蛇足な感じもありますが、有意差があるのかないのかというのは非常に大事な観点です。グラフをうまく見せる本というのも存在しますから、こういうのに騙されずに見抜く力というのも養えるといいですね。

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