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本を熱いうちに読む

厚みのある本は苦手

国木田花丸の"ずら"は方言か否か 『ことばの地理学: 方言はなぜそこにあるのか』

 

本日の一冊はことばの地理学: 方言はなぜそこにあるのか

 

方言学の専門家である著者が、言葉と地理の2つの視点から方言についてまとめた一冊。みなさんが住んでいる場所にも方言がいくつかあると思いますが、方言とはいったいどのようなものでしょう。

 

方言は、場所によることばの違いです。

 

 そのままですね。

 

方言周圏論

 

タイトルの花丸ちゃんのずらの話は少し置いといて、まずは方言がどのように成立したかを説明するのに外せない考え方、柳田国男が提唱した「方言周圏論」を紹介しましょう。

 

方言周圏論では、中央(通常、全国を対象とする場合は、永らく政治文化を担ってきたと見なされる歴史的中央としての畿内を想定する)で発生したことばの変化が順次に放射され、周辺に向けて拡散した結果、そこを中心とした同心円的分布が形成されたと考える。

 

この方言周圏論の説明で出されるのが「かたつむり」。カタツムリは、ナメクジ、ツブリ、デデムシ、マイマイなどの呼び名がありますが、このカタツムリの方言を地図に当てはめると、畿内を中心として円を描いたように分布しているということです。

図にすると以下のようなイメージ。

 

http://pds.exblog.jp/pds/1/201206/13/21/b0052821_17445215.jpg

参照:くにおマイマイ : 塩はうまくてまずいです

 

図を見ると、なるほどなーと思ったりするのですが、実際には、カタツムリもデデムシも全国的に使われており、方言なのかも疑わしく、同心円に分布しているように見えないと著者は言います。そして、同心円に見えないのに、どうしても方言の歴史を授業でする上で、この方言周圏論は説明しなくてはならなく、著者の困惑さが文章から感じ取れます。

 

「かたつむり」の方言分布を30年以上見ているが、実は私には一度として、言われるような同心円が見えたことがない。(中略)大学で授業するときには、『蝸牛考』と「方言周圏論」は避けて通るわけにはいかない。そこで、どうしてもこの「かたつむり」の分布について話さざるをえない。地図を示しながら、つらい気持ちを押し隠し、ことばを濁しつつ、「同心円」と言ってきた。学生諸君は素直で、教師の言うことに間違いはないと信じているから、同心円の存在をそこに見ている。いや、強引に見させてしまってきたのかもしれない。

 

方言学の先駆者として方言周圏論を提唱した柳田国男を尊敬しつつ、しかし方言周圏論には疑問を感じてしまう著者はこう締めくくる。

「かたつむり」の分布図から同心円を見て取るには、柳田のようによほどの才能が必要なのだ。

 

もはや嫌味に聞こえてきます。

 

 

 

 ズラ

 

お待ちかね?ずらの話。

ラブライブ!サンシャインというアニメには、国木田花丸というキャラがいます。同作品は、静岡県沼津市周辺が舞台となっており、花丸ちゃんは語尾にーズラをつけて喋ります。

 

「ずら」とはいったいどういう意味なのでしょう。

ズラが使われるのは、山梨県西部、長野県南部、静岡県、愛知県東部である。そして、共通して「明日は雨ズラ」のように言う。これは「明日は雨だろう」を意味する。したがって、ズラは推量を表す。

 

「ずら=だろう」という意味らしい。ちなみに、ズラを使う地域では、ラも使うようです。ラを使う愛知県出身の友達を知っていますが、ズラと言っているところは聞いたことないですね。ズラとラでも方言分布は違うのでしょうか。

 

さて、「ずら」の起源はいったいなんでしょう。

ズラの起源は「むずらむ」や過去推量の「つら」への類推など諸説ある

 

過去推量・・・。読み進めると体言や助動詞(断定辞)などの文法の話も出てきてちょっと困惑。言語学なんだから当たり前なのだけど。小難しい話は省略して、奈良県や長野県の一部では断定辞「だ」を「ドー」というそうで、この「ドー」に「ラ」がついて、ドーラとなり、ズラに変化していたったのではないかと推察しています。

 

簡単に「ずら」についてまとめたけれど、ここでラブライブ!サンシャインの公式サイトに載っている花丸ちゃんの紹介文を見てみよう。

 

まさかオラがスクールアイドルになるなんて、おもったこともなかったけど―でも、親友のルビィちゃんのことはほっとけないし―これも人間の運命と思って頑張るずら!(中略)どこにいっても誰といても、しょせん人間は1人なんだなぁって。そんなオラの気持ち、わかってくれる人がいたら嬉しいずら♪

参照:ラブライブ!サンシャイン!! Official Web Site | メンバー紹介

 

 頑張るずら。嬉しいずら。このズラは推量なのだろうか。ずら=だろうですから、言い換えてみよう。

 

「人間の運命と思って頑張るだろう!」

 

「わかってくれる人がいたら嬉しいだろう!」

 

なんか違う。「だろう」というより、頑張ります、嬉しいですの「です・ます」のほうが正しい。そう考えると、花丸ちゃんのズラは一体なんなんだ?

 

悩んでいたところに、いいツイートを見かけた。

 

 なるほど。ズラは方言ではなく、語尾枠として使われた言葉で意味なんてなかったんだ。田舎を印象付ける「ずら」と、語尾としての「ずら」。言葉の使い分けは難しいずら・・・