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本を熱いうちに読む

厚みのある本は苦手

ゾンビは不眠で健忘症 『ゾンビでわかる神経科学』

医学 雑学

 

 本日の一冊は「ゾンビでわかる神経科学

 

「ゾンビでわかる神経科学」というタイトル。私の中では「神経科学でわかるゾンビ」という解釈で読んでいたので、ゾンビの話あまり出てこないなという印象。

 

この本は、神経科学がメインであって、ゾンビは神経科学を理解する上でのおかずみたいなところ。メインディッシュは神経科学なところに注意。

 

メインが神経科学ですから、脳や神経の言葉がずっしり。読むだけでも大変な上に、理解するのも大変。神経科学初心者の私には少し難しすぎました。

 

ただ、ゾンビについての記述はどれも面白く、神経科学の話はパラパラ読みで、ゾンビのところを中心に読みました。

 

ゾンビは不眠症

 

この本では一つの章に一つのゾンビの疑問を投げかけ、そこから人間の神経科学について説明されていきます。

 

例えば、ゾンビは寝るのか、ゾンビは言葉を理解するのか、ゾンビに記憶はあるのかなど。

 

さて、ゾンビは寝るのだろうか。というか夢を見ているのだろうか?

 

ゾンビは睡眠と覚醒の境界に永遠にとどまっているというのが私たちの仮説だ。(中略)ゾンビはぐっすり眠ることもすっきり目覚めることもできず、意識の欠乏した状態にとらわれている。その結果、神経活動全般がスローダウンしてしまうのだ。

 

難しい神経科学のお話は、ぜひ本著を手に取って読んでほしい。(私が理解できていないことを、文章にできるほどの技術はない)

 

ゾンビは適切な睡眠をとることができれば、もう少し人間らしさ?が生まれるのだろうか。ゾンビが寝ているのもそれはそれで怖いけど。

 

ゾンビの作り方

 

ゾンビは寝るのか、という話をしておきながら、そもそもゾンビはなんなのかという話に戻る。

 

ゾンビの起源はヴードゥー教というハイチにある宗教にある。ヴードゥー教ではなんとゾンビを作る風習があるのだ。

 

ゾンビを作る過程はいたって簡単?。まず、テトロドトキシンという毒を盛る。命を落としかけるような麻痺をさせ、仮死状態にするそうだ。このテトロなんたらは身体から抜けていくと再び目覚める。

 

そして仮死状態から回復していく時に、幻覚作用のあるチョウセンアサガオを服用させる。このアサガオさんには毒の分解を加速すると同時に、幻覚を引き起こす作用があり、このアサガオの効果によって、意識を支配するらしい。これがヴードゥー教におけるゾンビの作り方。

 

しかし、この本で取り上げるゾンビは映画などに出てくる架空の存在がほとんど。であるからして、ゾンビは現実の存在ではないと仮定し、著者はこの架空のゾンビについて仮説を立てていく。

 

 

 

ゾンビの生態

 

ではゾンビはどういった神経・脳の状態なのだろうか。

 

眠りをつかさどる深部脳システムが機能不全に陥っている

 

さきほど書いたが、ゾンビは眠っているように見えない、つまり極端な不眠症で睡眠に関するシステムは機能していない。

 

人間のほうからゾンビに向かって走っていくことはめったにないから、歩く屍は食料のある場所まで足を運ぶ必要がある。だとすれば、ゾンビも依然として脳を必要しているわけだ。そう、少なくとも脳の一部を。

 

ゾンビは飢えて死ぬのか。いや死んでいるのだけど。なんてことも考えますが、ゾンビは人を食べる行動をするために、人がどこにいるのかを認知し、そこに進む力を持っている。それは脳がなければできないってことね。

 

ゾンビ感染の運動症状の多くは小脳機能障害のせいで生じるのだ。いっぽう、大脳皮質運動野大脳基底核の神経経路はあまり損なわれていないはずである。

 

運動症状は、例えば歩き方がのろい、ぎくしゃくしている、ぎこちないなど。しかし、食料を見つけ進む計画を立て実行することは可能ということから、大脳の神経経路は傷ついていないのではという仮説。

 

このあたりから私の脳は小脳?大脳?お、おう。みたいに、もはや考えることを放棄したゾンビのよう。

 

ゾンビは脳の深部の(新皮質の下に埋まっている)辺縁領域に大きく依存しており、大脳皮質の衝動制御機能はほとんど活用していないのだ。ゾンビが脳のより深部のこうした領域に大きく依存しているらしいとすれば、「ゾンビ問題」を解決するのは実に簡単ではないだろうか。脳の深部の辺縁領域を破壊すれば、人間を食べようとする衝動はなくなるはずだ。

 

多くのゾンビゲームでゾンビの撃退法は頭をつぶすことであるから、ゾンビゲーム制作陣もゾンビは脳の損傷によって引き起こされていると考えているのだろう。

でも時々あたまをつぶしても動くゾンビがいるわけで、さて彼らはどうやって生きて動くのか・・・。

 

ゾンビが見せる衝動的、爆発的、攻撃的行動を考えると、こういって間違いないだろう。ゾンビは眼窩前頭皮質が適切に機能しておらず、結果として、おそらく辺縁系の働きが優勢になりすぎているのだ。そのため、ゾンビの扁桃核視床下部視床はつねに活動が過剰で、HPA系の激しい変化やホルモン系の異常調節を招いてしまう。

 

ゾンビはいつも人を追いかけている。人じゃなくてもいいはずなのに。動物を食べてもいいはずなのにね。ゾンビはどこかで人に恨みを持っているのだろうか。

 

ゾンビの脳では前頭葉の言語生産領域および側頭・前頂葉の言語理解領域がともに損傷を受けているように思える。(中略)したがって、ゾンビの脳では、言語とコミュニケーションにかかわるあらゆるスキルがひどく破壊されていることになる。しかし、聞く力はほぼ無傷のまま残っている。

 

この言語生産領域の損傷は失語症につながるため、ゾンビは言葉を使えないし、理解しない。いくらゾンビに語り掛けても意味がないのはこのためである。語り掛けることは自分の居場所をゾンビに伝えて、どうぞ食べに来いよと言っているようなものだ。

 

ゾンビが(少なくともまだ目がついているゾンビが)人間を見ることができるのはわかる。また、ゾンビが人間を易々と追いつめられることから、空間内の相手の位置に注意を向けられることもわかる。したがって、ゾンビの網膜視床一次視覚野、さらに背側皮質視覚路の大半は無傷などみなしていい。だが、ゾンビはいったん何かに注意を向けると、それに固執することもわかっている。注意を引く事物から目を離せないのは、刺激起動型行動を制御する能力に欠けているからだ。ここからすっきりするのは、前頂葉のどこかで、背側皮質視覚路の処理能力に問題があるということだ。

 

ゾンビは物音に反応して、人間を発見する。しかし、その人がいる場所とは違う場所で大きな音を出せば(レンガを遠くに投げれば)ゾンビはそちらに注意を向ける。そしてその大きな音が続けば(ラジオ、テレビが流れば)ゾンビはその音が鳴るものにしか注意が向かない。

 

ゾンビ症候群の正体

 

ゾンビの症状を見てきたが、ではこれを総合すると、ゾンビの病名はどういったものになるのだろうか。

 

私たちは、ゾンビ症候群のひとつの要素は後天性の相貌失認だといいたい。つまり、感染に伴うなんらかの理由で、顔の認識をつかさどる腹側皮質視覚路の機能が損なわれるのだ。

 

相貌失認は、「顔を見てもその表情の識別が出来ず、誰の顔か解らず、もって個人の識別が出来なくなる症状」(wikipedia参照)のことである。

 

ゾンビが発生するのはいつも自分がいる町だ。そして隣の住人はゾンビとなり、自分に襲い掛かる。そのとき、隣人ゾンビは私が誰かを理解していないのだ。それに言葉も通じない。音に反応するだけ。もはや別人だ。顔をつぶすしかない。

 

ゾンビは自分がかつて誰だったか覚えていないし、生活のそのほかの面をはっきり思い出すこともできない。逆行性健忘に陥ったかのように、ゾンビとなったその瞬間から、彼らはそれ以前の意識的記憶にアクセスできない。(中略)これほど重い健忘の症状を呈するからには、私たちの仮説の対象であるゾンビは左右両方の海馬に深刻な障害があるにちがいない。

 

ゾンビは不眠症で健忘症、小脳や前頭葉は障害がおき、辺縁系の働きが強い。ああ、これだけの症状が起きたら確かに人間として存在できなさそう。

最後の章にはゾンビ症候群の病名、症状、そしてゾンビのやり過ごし方などがまとめられていますが、そちらは本書を読んで確かめてください。

 

 おしまい。