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本を熱いうちに読む

厚みのある本は苦手

水汲みは知識を奪う 「水の未来――グローバルリスクと日本」

  

本日の一冊は「水の未来――グローバルリスクと日本 (岩波新書)

 

水資源から気候変動という大きな話題まで網羅している一冊。

 

1.グローバルリスク

 

グローバル化が進んだ今、ある一国で起きた出来事が、他の国にまで影響を及ぼしてしまうグローバルリスクが日に日に高まっています。

 

最近ではイギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)がEUに残留か離脱かの国民投票で、まさかの離脱派が勝利してしまい円が買われたり、世界中の株価に大きな影響を与えました。

 

水の話でいうと、2011年10月にタイにあるチャオプラヤ川が大洪水に陥りました。この大洪水によって、800以上の企業が浸水被害にあったそうで、その経済損失は1兆円ともいわれてます。

 

そして、このタイで起こった大洪水は日本の企業にも大打撃を与えることに。

 

浸水被害にあった企業の半数以上が日系企業で、日本の損害保険会社による企業向けの保険金支払い総額は再保険分も含めて約9000億円にものぼり、東日本大震災向けの約6000億円をはるかに超えたという

 

これは水災害で経済に打撃を与えた例ですが、もう一つの水問題を示す災害が2015年3月のチリで起きた豪雨です。

 

豪雨とありますが、数時間で約30ミリメートルという値で、日本では強い雨と表現されますが、問題視するような雨量ではないようです。

 

しかし、チリでは数時間に30ミリの雨が降ることは稀であり、そうした雨対策が足りなかったために、死者行方不明者100人を超える被害が生じました。

 

これは何を意味するのでしょう。

 

つまるところ、被害がもたらされるのは「いつもとは違う」のが原因であり、その違いが大きければ大きいほど発生は稀である。稀な災害を二度経験する人は少なく、災害の記憶は世代を超えて引き継がれにくいので、稀で極端な自然災害による被害は大きくなる。

 

問題が起こるのはいつもとは違う状態。当たり前ですが、このいつもと違う状態を経験することはあまりないので、ついつい忘れてしまうのでしょう。

 

2.世界の水問題

 

世界では水が十分に使えないところがいくつもあります。

 

汚染されないように改善された水源からの飲用水を使っていない人々が世界にはまだ6億6300万人もいて、その約4分の1に相当する1億9500万人は川や湖などの表流水をいまだに直接飲んでいる。

 

さて、いろいろと説明を省きまして、水を得るために水汲みをしなければいけないところも多く、この水汲み労働への本質的な問題を著者はこう説明しています。

 

喉が渇いたり健康を害したりして死にそうになるから、というよりは、時間が奪われ、労働や教育の機会損失によって社会経済的な開発が阻害されるのが、水汲み労働の本質的な問題なのである。

 

今日一日を生きていくための労働をすることによって、教育や労働を得ることができず、その地域の社会が発展しない。これが問題だ、ということ。

 

日本でも、貧困層家庭で育った子供たちは塾や習い事を受けることができず、負のサイクルになっているなんて報道を見かけますけど、似てますね。

 

最低限の生活を送るための支援がまだまだ足りない。それは世界中どこにでもある問題で、なかなか解決しないのが残念です。

 

3.仮想水貿易

 

仮想水貿易。はじめて聞く言葉でしたが、この本の中で一番興味深かったのでこれについて紹介します。

 

仮想水貿易とは一体なんでしょう。

 

水をめぐる紛争は、深刻な水不足から想定されるほどには勃発していない。それはなぜだろうか。「はじめに」でも紹介したキングス・カレッジ・ロンドンのトニー・アラン教授は、それは食糧輸入によってその生産に必要な分の水資源を使わずに済んでいるからである、と看破した。(中略)すなわち、水需給が逼迫している地域にとって食料の輸入とは、あたかも水を輸入しているようなものである。このような意味で、アラン教授はこれをバーチャル・ウォーター・トレード(仮想水貿易)と呼んだ。

 

アラン教授は、この仮想水貿易を説明する際に、小麦を1キログラムを育てるためには、水1000リットルが必要だという概算を引用しています。

 

確かに水がない地域で小麦を1キロ育てるようと思って、水1000リットルを輸入するなら、小麦を輸入したほうがいいですよね。

 

まあ商品にはなんでも経費ってのが含まれているわけですが、作物を育てるための水を輸入していると考えのは、中々面白いなと思ったわけです。

 

日本でも色々な作物を輸入に頼っていて、仮想水貿易になるのですが、少し違った理由もあるそうです。

 

日本では飼料用作物を安価に生産・供給できる農地や牧草地が不足していて、それを補うかのように食料を輸入するのに伴って仮想水も輸入されている。そういう意味では、日本にとっての食糧輸入は水の仮想的な輸入というよりは、どちらかというと主に農耕地や牧草地の仮想的な輸入である

 

山々に囲まれている日本では場所の確保は大変ですからね。

 

4.まとめ

気候変動に関する話もいろいろ書いてありますが、ここでは水に関する話題を取り上げました。

 

水汲み労働による経済損失はどうにかしてほしいものですね。

 

最後に、未来についてなるほどなと感じた一文がありましたのでそれを引用して終わります。

 

もし世界に成長の限界が来るとしたら、資源の枯渇や汚染の蓄積のせいではなく、現時点ではモノやサービスをもっと消費したいと希求している人々の欲求や余暇が満たされ、世界全体で需要が伸びなくなったときだろう。

 

日本は満たされ始めているのかもしれません。

 

おしまい。