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本を熱いうちに読む

厚みのある本は苦手

自覚すると呪いは成功する―「よろずのことに気をつけよ」

文化人類学と言っても分野はいろいろある。

習慣や信仰、神話から都市伝説に至るまで、民間伝承の要素があれば成り立つ学問だと言えるだろう。なかには「呪術」なんてものを専門にしている変わり者もいる。埃をかぶった古文書を紐解き、各地に残る風習に拾い集めて、呪術の系譜を明らかにしようというわけだ。

本日の一冊は「よろずのことに気をつけよ

 

ストーリー

 

 呪術を研究する文化人類学者の仲澤大輔のところに、祖父を殺されたと言う砂倉真由が1つの呪術府を持ってくる。

 

呪いで人は殺せるのか、どうして祖父は死んだのか。強気な真由とともに仲澤は殺人事件の真相を究明する。

 

しかし、そこには真由の祖父が犯した罪が隠されていた。

 

思い込む力は精神を善にも悪にもする

 

警察が仲澤に呪いは本当にあるのか、と問うシーン

 

「ただ、刑事さんの言う、人を殺せるほどの怨念に関しては、一方だけの念では成立しないと考えていますよ」

「というと?」

「呪われることをした自覚が受け手にある場合に限って、効果が高まるものだということです。つまり、呪詛されるかもしれない恐怖だけで、精神不安に陥るし体調も崩す。要は、これが呪いにかかった状態だと言えるわけです。刑事さんもおわかりのように、呪術は心理戦なんですよ」

 

これは中々鋭い意見。

 

呪う側がただ呪うのではなく、呪われる側がその自覚があった時、呪いはかかったと言える。そして呪われる側が体調を崩せば呪いは成功する。

 

一方的に呪うのは、ただ感情を放出していて、呪われる側になんら影響はないのかもしれないですね。

 

また、違うシーンに、真由が白魔術の占い師、湯山の仕事について聞くシーン。

 

「店に来る八割が恋愛相談。あとの二割が今の恋人との縁切りだ。そこにとらわれて生活に支障をきたすようになったとき、人はなんでもいいから突破口が必要なんだな。前へ向かう気力を高めてやるのが俺の魔術ってわけだ。まあ、言ってみればインチキなのさ」

(中略)

「術のアイテムなんかは?」

「オイルとか薬草を練ってつくったお香。これと護符で気は正常に働くようになるな」

アロマテラピーには薬効もありますもんね。それと護符による適度な自己暗示。湯山さんがやっていることは、占いとか魔術と言うより、学術に裏打ちされた精神治療だわ

「それを聞いて安心したよ。きみはインチキ占い師のカモになる心配はない」

「ええ、それはもう。それに、そのへんにいる心理カウンセラーのほうが占いよりインチキですけどね」

 

こちらは呪いではなく救いとでも言うのでしょうか。

 

救われたい思いを抱いてやってくる人たちに、

 

アロマと護符を使って、気を正常にする。

 

はたから見れば、怪しいのなにものでもないと思うのですが、

 

救われたい側がアロマや護符によって救われると信じることによって

 

本当に気が安らいでいく。

 

呪いも救いも、そう自分に言い聞かせることが一番影響力があるということでしょう。

 

また、心理カウンセラーのほうがインチキとばっさり切り捨てていて面白い。

 

優しい言葉をかけるだけで人は前に進めない。

 

暗示でもさせて、前を向かせていくほうが人は変に思いつめなくていい気がします。

 

精神科も薬を飲ませるだけで、根本的な解決をすることはないように思えますし。

 

だから人は宗教にはまってしまうのかも。

 

気になる一文

 

学者は誰もが知ってることしか知らないし語らない。

 

鋭い意見だなーと。

 

コーヒーそのものというより、未知の国の風土を味わうわけですか  

 

仲澤や湯山はコーヒーマニア。コーヒーを飲むところを何度か登場するが、

 

豆について説明していると、真由が発したひと言。

 

未知の国の風土を味わう、という言葉はすてきな印象を持ちます。

 

日本茶や紅茶、コーヒー色々飲む方ですが、

 

あの土地の味はこういうものか、なんて考えたこともありませんでした。

 

ただ飲んでいるだけで、歴史や知識なんて全く知らない。

 

今度から飲むものがどこで育っているのか、どういう背景があるのか、

 

少し調べてから、飲んでみようかな。

 

演出の小道具が多い者が、賢い大人って呼ばれるのさ。知識、経験、余裕。みんな大人を演じる打目の道具だ。

 

演出、演じるは、「仮面」と置き換えてもいいかもしれませんね。

 

仮面が多ければ多いほど、賢い大人。まったくそのとおりです。

 

自分はいくつの仮面をもっているのだろう。きっと少ないな・・・

 

お_し_ま_い_。