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本を熱いうちに読む

厚みのある本は苦手

空想の世界はどこまでありなのか。―「完盗オンサイト」

激しい雨が泥土をたたいている。風がうなり、木々の葉が吹き飛ばされていく。

千代田区千代田、皇居・大道盆栽仕立場。

稲妻が漆黒の闇を切り裂いた。刹那、何百もの盆栽が夜に浮かび上がる。悠久の時と深い愛情によって育まれた名品たちだ。盆栽は今、屋外にある仕立場で枝葉を揺らし、嵐が去るのを待っている。

本日の一冊は「完盗オンサイト

 

 ストーリー

フリークライマーの水沢浹(みずさわとおる)は、些細な事から桐泉寺に住むことになる。そこには、住職の岩代と、子どもの斑鳩(いかる)が住んでいた。

 

浹は岩代の紹介で工事現場で働きだすが、クビになってしまう。

 

しかし、クビにした会社の会長に呼び出され、皇居から盆栽を盗み出す依頼を受ける。

 

依頼を受けることにした浹だが、別れた恋人、人格崩壊した男によって事態が変わる。

 

そんな中、浹が最後に下す決断とは・・・

 

オンサイト

 

タイトルにあるオンサイト。クライミングの言葉らしい。

 

「クライミングに『オンサイト』って言葉があるんです。」

「オンサイト」

「自分が一度もトライしたことのないルートを、初見で完登すること。―――」

 

盗みの速さ

 

盆栽を盗むラストは話の進行が早い。というよりページ数が少ないというべきか。

 

前半は様々なシーンが混ざっていたため、長く感じるし、ページ数もある。

 

しかし、後半はスラスラ話が進んでいく。ページ数も少ない。

 

ラストも軽い感じがした。

 

キャラクター小説

 

この小説に出てくる人物は個性が強い。

 

選考委員ではそれの是非で意見が分かれたようだが、

 

小説は違和感がなく、筋道がきちんとあっていれば、なんでもありでしょう。

 

ラノベは特にキャラクターの個性が強いし。

 

花と大人

最後に、気になる一文を書いて終わり。

岩代が浹に、斑鳩の境遇について話すシーン。

「あそこに花が咲いている、と私から教えられるのではなく、うっかり踏みつけそうになった足を持ち上げ、その下にちいさな花があることに、自分で気づいて欲しかった。それが、どれだけ懸命に花を咲かせようとしているか、おまえの目で確かめて欲しかったんだ。常識や人の目など気にせず、やりたいことに真正面からぶつかっていく。それがおまえの長所だろう。けどな、周りが見えなければ、子どもと同じだ。他人の気持ちを理解して始めて見えてくるものが世の中にはたくさんあるんだよ」

 

お_し_ま_い_。